「人はみな、自分のことを求めるだけで、キリスト・イエスのことは求めていない。」
当時ローマの教会は、教会内のことで問題をかかえていました。そのため、自分たち以外のことに心が
いかなかったようです。キリスト・イエスのことを求めて生きる生き方とは、キリストの心を心とする生き方と
いえます。それはどのような生き方でしょうか。
1．親身になって心配するテモテ－
テモテは、第二伝道旅行のときからパウロと共にいた弟子です。パウロはこのテモテをとても愛し、信頼
していました。２０節にテモテがピリピの教会のことを親身になって心配しているとパウロは語っています。
テモテは、獄中のパウロのそばで仕えていました。その働きは、簡単なものではなく、心配事も多々あった
はずです。しかし、テモテは偉大なパウロのことしか目に入らないような器ではありませんでした。獄中のパ
ウロに仕える苦労よって自分自身のことを悩むよりも、ピリピの教会のことを親身になって心配していました。
私たちは、熱心になるとひとつのことしか目に入らなくなります。それが神のためだとしても、そのことだけし
か目に入らなくなったら、気づかないうちに自分のことを求める生き方となってしまいます。
2．キリストのために命をかけたエパフロデト-
エパフロデトは、ピリピの教会員であり、ローマ教会のためにピリピ教会からの贈り物を携えて、パウロの
もとにきました。そして、ローマにとどまりパウロに仕えました。ところが病にかかって瀕死の状態になりまし
た。ローマへの旅においても、獄中のパウロに仕えることにおいても、苦労の連続だったことでしょう。それ
ばかりか、そのためにいのちを落としそうになるほどの病にかかったのです。彼は、この身の不幸を悩みま
せんでした。むしろ、病気をしたことでピリピの教会の人たちに心配をかけさせたことや、早く自分の使命を
果たすためにピリピの教会へ帰りたいと切実に願っていました。エパフロデトは、この仕事を引き受けなけれ
ばこんな目にあわなかったのにと後悔してもおかしくないでしょう。しかし、彼はピリピの教会を思う思いで溢
れているのです。
3．愛する群れのために心をつかうパウロ-
パウロにとって、エパフロデトも、テモテも、なくてはならない有用な働き人でした。テモテは身の回りのこと
を世話する弟子でしたし、エパフロデトは、パウロの窮地に仕えてくれました。しかし、この二人をピリピの教
会のために送り出すのです。そして、エパフロデトを喜んで迎え、尊重しなさいと語っています。ピリピの教会
に帰るエパフロデトに対しても心遣いをしているのです。それは、様々な心配が取り除かれて、喜びが溢れる
ためでした。
人の群れは、まことに小さなことでいざこざが起きやすく、せっかく計画したことが台無しになったと非難の
声があがりやすいものです。そして不信の空気が漂います。そんなところに喜びはありません。問題が色々
起こっても、親身になって互いを思う思いで溢れるとき、キリストを思う思いであふれるとき、どんなことがあっ
ても、喜びが溢れてくるのです。