『
…これがイシュマエルの子孫である。これらは、集落と宿営ごとにつけられた彼らの名で、
十二人の、それぞれの氏族の長である。以上がイシュマエルの生涯で、その年数は百三十七年であった。
彼は息絶えて死に、自分の民に加えられた。…』
（創世記 25章12～18節）
イシュマエルの生涯は、恵まれたものではありませんでした。サラの策略により跡取りとして生まれながら、「イサクとともに跡取りになるべきではない。」（創世記２１：１０）と言われ、奴隷であった母と共に追い出されました。その途上で、母が生存を諦めるほどの困難（創世記２１：１６）に合いました。しかし、その生涯を閉じたときには、１２部族の祖となり、自分の民に加えられ、恵まれた最期を迎えました。なぜだったのでしょうか。
「自分の民に加えられる」ことは、先に亡くなった先祖のところに行く。という意味ですが、これはアブラハムが亡くなったとき、聖書に初めて登場します。アブラハムの先祖は、アダムとエバから始まり、ノアを含む、約束の子に繋がる家系の人々です。この表現は、聖書では特別な人にのみ使われています。他には、アブラハム、イサク、ヤコブ、アロン、モーセだけです。イシュマエルは、アブラハムと同じところに行ったことになります。そして、そこにはイエスがいます（ルカ１６：１９）。
イシュマエルが、「肉によって生まれた」（ガラテヤ４：２３）と言われながら、このような祝福を受けたのは、アブラハムの願いによるものです。「イシュマエルが御前で生きますように。」（創世記１７：１８）と言ったとき、神は「必ず、わたしは彼を祝福する。」と約束をします（同：２０）。その元には、アブラハムに対する「地のすべての部族は、あなたによって祝福される。」（創世記１２：３）という約束があります。
アブラハムの祝福は、追い出され、傍系とされたイシュマエルを、直系の恵みへと戻します。私たちは、アブラハムの祝福を受け継いでいることを見てきましたが、イエスの祝福を受けた私たちは、イシュマエルと同じように、傍系から本系の約束の子の恵みへと戻されたものです。
人が取るに足りないと見る者でも、神は決して忘れず、愛していることを、イシュマエルの歴史は伝えています。この愛から漏れる人は、誰一人いません。
